わすれもしないあのクイーンカップの前日、東京競馬場近くの飲み屋で予想大会を開いた。そこにヤクザから足を洗ったばかりの男が参加していた。4本指の予想家としてメディアに取り上げられる日々を楽しんでいるようだった。
この男の本命はウメノファイバーだった。オヤジがサクラユタカオー、東京コースが一番合う。迷わず勝負しろと言われ見事馬券を的中させた。
次走はオークスだった。
この男の本命はまたウメノファイバーだった。
レース間隔が随分と空いたことと距離不安、そして地味な血統背景から7番人気だった。さすがにこの馬から勝負に出るには何かしらの買い材料が欲しい。
そしてこの男に買う根拠を聞いた。
黙って見てろ!東京得意な馬は距離うんぬん関係ない。気持ちよくまわって直線ゴーや!
レースの直線、この男は過呼吸で倒れた。4本指の人差し指だけ突き立てて。
そのレースを最後に大金と共に彼は行方不明になった。