競馬マニアック博物館

競馬中心の内容です。サラブレッドカードを後世に残す活動をしています。

江戸川万坊 珍獣

あれは、私が社会人になったばかりの桜が舞い散る4月半ばの出来事だったと記憶しております。
毎朝、朝食を食べ洗面所で歯を磨いていると 「っざいま~す」と壁の向こうから聞こえるのです。
それも毎日同じ時間に聞こえるのです。
「っざいま~す」

不思議なのが土曜だったか日曜だったかは、定かではないのですがランダムに「かつ!」とやや大きな声が聞こえるのです。わたしは、その非日常的な出来事に対し体が凍りつくような記憶を覚えています。

いてもたってもいられぬ私は、明智玉三郎先生に事件を解決して欲しいとお手紙を書きました。
突然の事で失礼だとは重々承知の上でご相談させていただきました。

手紙を出した、その後(のち)玉三郎先生が家に尋ねていらっしゃいました。
読売ジャイアンツの帽子に作業着とも見てとれる紺色の上着をはおり右手には大吟醸らしき物を持っていました。
突然のことでハッと驚きました。

先生は隣に住む住人のことを調査したいとおっしゃっていて、来て間もなく隣の部屋のドアをノックしたのです。
すると中から髪の長い青白い顔をした羽の取れたハトのような弱々しさを持つ、なにかモナ・リザの不思議な微笑を思い起こすような、一種異様の感じにうたれないではいられませんでした。

そして先生が私を苦しめる謎について重い口を開き始めたのです。

『あなたは、毎朝かかせない「とくだね!」を見ながら寝起きという無意識状態で小倉流挨拶を交わしていたんじゃないですか!もう一つ、休日に聞こえる「かつ」の声は大沢親分の真似をしていたからじゃないですか!』

こうして、明智先生の推理ともいえない、直感で事件が解決したのである。
窓の戸を開けると薄暗い路地裏から藁人形(わらにんぎょう)を持った老人がこちらを見つめていた。